【執筆原稿から抜粋】
家庭連合の解散について、私がBitter Winterあたりに発表しようとしている論考の日本語ドラフト版を取り急ぎシェア差し上げます。
東京地裁が統一教会に解散命令
暗殺犯の夢を実現した
弁護士 中山達樹
2025年3月25日の、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の解散命令請求裁判で、東京地裁が、「解散する」という決定を下しました。
安倍元首相暗殺において、暗殺犯は恨みを抱いていた「家庭連合と親しい」ことを理由に元首相を暗殺しました。
家庭連合を解散させるこの決定は、暗殺犯の夢を叶えることになります。
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まず、解散事由の「法令に違反」に民法不法行為が含まれるかについては、この東京地裁決定は、予想通り今月3月3日付け最高裁決定を踏襲し、肯定的な判断を下しました。
この東京地裁決定は、家庭連合が「著しく公共の福祉に反することが明らかな行為をした」か否かにつき判断しました。
家庭連合が主張してきた以下の3点につき東京地裁は何も言及しなかったことは残念です。
- 原告文科省に協力した多くの背教者が拉致監禁・強制改宗の被害者であること
- 原告文科省が陳述書を「捏造」した疑惑
- 「法令に違反」や「公共の福祉」という広汎な文言を解散原因とすることは国際法に違反すること
その他、116頁の判決文には、信教の自由を脅かす以下の3点がありました。
1 示談や和解も「不法行為」
東京地裁は、家庭連合による献金受領が公共の福祉に反するかを判断するにあたり、「不法行為」の概念を著しく広げました。
家庭連合が敗訴した32件の民事裁判(事案は平均して32年前)のみならず、裁判前の示談や、判決前の和解も、「不法行為の有無・内容・規模」の検討において考慮しました。
示談や和解した場合、「解決金」としてお金が払われるのであり、そこで「◯◯が不法行為をした」とは認定されません。
それにもかかわらず、家庭連合が行ってきた示談や和解での献金返還が「不法行為」として括られ、「膨大な規模の被害」を生じさせて今も「なお看過できない程度の被害」が残存している理由とされました。
これは他の宗教に対する恐ろしい警告になります。
「裁判を提訴されたら、絶対に和解も示談もするな! 必ず勝訴判決を取れ! さもないと、いずれ裁判所から和解や示談も“不法行為“と認定されるぞ!」
という教訓が導かれることになります。
2 コンプライアンス宣言の効果を「想定」
家庭連合が解散になるかの最大の争点は、2009年に家庭連合が行った「コンプライアンス宣言」の効果です。
同宣言後、家庭連合は状況を著しく改善してきました。

実際、2009年コンプライアンス宣言後に開始された献金については、わずか4件しか提訴されていません。
高額献金が喧しく論じられましたが、最近12年は裁判所で献金の違法性は1つも認定されていません。
解散命令請求の原因とされた32件の裁判のうち、コンプラ宣言後の事案は1件のみで、その裁判で認められた賠償命令の額はわずか476万500円にすぎないのです。
この家庭連合の改善により解散に値しないことは、家庭連合の解散を目論む反カルトグループ(霊感弁連)の過去の活動と併せて考えると分かりやすいです。
霊感弁連の活動により、1994年や1998年には国会で家庭連合の解散の当否が論じられましたが、国は解散命令請求の必要はないと判断しました。
コンプラ宣言後の2012年、霊感弁連は、家庭連合に対し解散命令請求を提訴しない文科省に対して損害賠償請求を求めましたが、東京地裁は「解散命令請求の必要なし」として霊感弁連は敗訴しました。

その後のコンプラ宣言後、家庭連合は組織を改善し、実際、2016年3月からもう9年間、コンプラ宣言後に開始された献金については1つも裁判を提訴されていません。
つまり、安倍暗殺事件の前は、家庭連合が解散するおそれは微塵もなかったのです。
しかしながら、東京地裁はコンプライアンス宣言後に改善したという家庭連合の主張を認めず、暗殺犯の願いを叶えました。
裁判所は、献金等の問題が「相当に根深い」ことを前提に、「根本的な(本質的で実効性のある)対策」を取らねばならないのに、家庭連合がその「根本的な対策」を取ってないと認定しました。
この認定の当否はともかく、その次がとても残念です。
東京地裁は、
- 根本的対策を取っていないから問題のある状況(家庭連合の悪い点)が残存していると考えるのが「合理的」であり、
- しかもその問題のある状況は今も「なお看過できない程度」に残存している
と判断しました。
まず、上記1の「根本的対策がないから問題のある状況が残存しているのが合理的」という推測が強引です。
悪い状況の残存を証拠によって認定しているわけではありません。
次に、百歩譲ってそのような「合理的」な推測が許されるとして、その問題の状況が今どれだけ残存しているかの程度(上記2)につき、裁判所は大きく論理を飛躍させます。
裁判所は、顕在化した請求のみならず、潜在的な被害の「申告」が「相当程度存在することが想定される」ため、今もなお看過できない程度に問題が残存していると判断しました。
実際に行われた請求のみならず、まだ顕在化していない、潜在的な隠れた被害が「相当程度」あることが「想定」されるという想像に基づき、家庭連合の問題状況が「現在においても、なお看過できない程度に残存していると解するのが相当」とされたのです。
「隠れた被害が多くあるだろうから家庭連合の問題は残存しているだろう」という憶測に憶測を重ねたようなこの判示は、「解散させたいための裁判所の作文」に思えます。
論理的でなく、解散という結論を導くための強引なレトリックです。
裁判所は、丁寧に、事実を認定するところです。
特に宗教法人の解散命令においては、東京地裁も言及する「憲法の保障する信教の自由の重要性に鑑み」て慎重に認定すべきです。
しかし、東京地裁は、慎重な「事実認定」をせず、強引な「想定認定」をしました。
3 信者の人権を軽視
東京地裁は、家庭連合の解散が「やむを得ない」理由として、被害のおそれが看過できない程度に今も残存し、根本的対策を講じていない教団に事態改善を期待するのは困難であることの他に、信者の信教の自由を蔑ろにする理由を述べました。
「法人格喪失により事実上生じる影響は、法人格を有していたことに伴う反射的利益に対するもの」としたのです。
この「反射的利益」は分かりにくいですが、要するに、
「宗教法人があることで信者が利益を享受していることは、法人格があることの反射的利益にすぎない。だから解散によって信者の人権が侵害されてもやむを得ない」
ということです。
家庭連合の解散で最も不利益を被る信者の人権につき、官僚的でよく分からない「反射的利益」という言葉で逃げて片付けたのです。
“人権の砦”たる裁判所はもっと言葉を尽くすべきでした。
このような「木で鼻を括ったような官僚的な答弁」により、暗殺犯山上の願いが叶えられつつあります。
家庭連合は控訴を行い、控訴審判決は今年中には出ることが予想されます。
以上
※この記事は、許可を得て、川塵録の家庭連合の解散決定に対する包括的なコメント(人権を無視した3点)を転載したものです。