その日の夕食はステーキだった。
ステーキとはいっても、豚だったが(笑)。
まあ、それはいい。
食卓に私が着くと、妻がナイフを持ってきた。
なぜかナイフだけ。
怪訝に思った私は聞いた。
「あれっ?フォークは?」
それに対する妻の答えは意外なものだった。
「そんな物は無いと」
私は耳を疑った。
家にフォークはあるはずだし、ナイフにはフォークは必需品だろう。
「えーーっ!!、どういうことよ?」
すると、妻は言った。
「ナイフの代わりに箸を使えばいいったい」
説明しよう。
夕食のおかずは、豚のステーキ以外にもあったのである。
それを食べるには、箸が必要だった。
だからと言って、フォークを出すと洗い物が増える、というわけだ。
ということで、妻はこうも言った。
「食器を洗ってくれたら、フォークを出してよかよ」
こうして、箸をステーキに突き刺して、ナイフで切る私の姿があった。
それを見た妻は、最後にこう言った。
「ほらー、箸で十分やろ」