走った、走った。
妻は走った。
チャリンコで娘を追いかけた。
学校へと向かっている娘を追いかけた。
娘がお茶を忘れたからだ。
しかし、気付くと小学校に着いていた。
「あれっ?」
と思ったけれど、今日は娘が歩くのが早かったのだろう程度にしか思わず、
たまたま、校門の所にいた娘の担任の先生に渡して、パート先へと向かった妻だった。
そして、その夜、妻は娘に言った。
「今日は、学校へ行くのが早かったねえ。お母さん追いつけんかったよ」
すると、娘はこう言ったのである。
「お母さんは、私を追い抜いたとよ」
娘は、集団登校しているのだが、いつもより列が長かったので、妻は気付かずに通り過ぎてしまったというわけだった。
妻はゲラゲラ笑いながら、
「もう、声かけてよね~」
と娘に文句を言いながら、私にこの話をしてくれたのであった。
