妻は怒っていた。
ATM(現金自動預け払い機)に対して怒っていた。
なぜならば、通帳を受け付けてくれないからだった。
何度入れても、
『モウイチド サイショカラ ヤリナオシテ クダサイ』
無機質な女性の声が、響きわたる。
「もーー、このボロ機械!!」
清楚な妻は、ATMに蹴りを入れた。
後ろで待ってた人に対しては、「オホホ」と愛想笑いを浮かべながら。
そして、大魔神のように顔を豹変させ、目の前の受話器を手にとって、銀行員を呼び出そうとした瞬間だった。
妻はあることに気付いたのだった。
そのあることとは・・・・・・、
通帳の色が違う、ということだった。
はーーい、違う銀行の通帳を、必死こいて何度もATMに入れてたんですね~。